植物RIイメージング研究に関する各種コンテンツ

近年、植物研究分野におけるRIのイメージング技術が発展し、対象となる元素の動態を非破壊的に撮影することが可能となってきました。
植物が土壌や大気から元素を吸収し、輸送、貯蔵する機能を解析する技術として注目を集めています。
ここでは研究者ネットワークであるBRIngとの連携企画として、植物の元素動態の解明研究に興味がある方に向けて様々なコンテンツを提供していきます。

BRIng(Bio-environmental and Radiological Imaging Network Group)

目次

植物RIイメージング研究者ネットワークBRIng

RIを使うメリット

植物RIイメージングで得られるデータ

植物RIイメージング研究に関するレビュー

イメージング元素一覧

イメージング装置一覧

FAQ

リンク集

相談窓口

 

植物RIイメージング研究者ネットワーク BRIng

塩基配列を解析するために32Pを使っていた時代は、生命科学者にとってRIは身近なツールでした。しかしながら、近年はRI利用者が減少し、RI施設が閉鎖されるなど、RIを利用したことのない研究者・学生が増加の一途をたどっています。一方で、植物を対象としたRIイメージングの技術は日々向上しており、多くの植物研究者にとって利用できるものもあると思います。そこで、RIの利用に長けた専門家から利用経験のない研究者まで自由な情報交換の場としてBRIng(Bio-environmental and Radiological Imaging Network Group)を立ち上げました。本HPでは、RIをイメージングする技術やRIをトレーサーとして利用した研究について公開し、さらにメーリングリストを立ち上げました。RI実験の相談等、お気軽に連絡をいただければ幸いです。

 

活動報告

BRIngメンバーの活動についてご紹介します。

 

BRIngメーリングリストへの登録

メーリングリストへのご登録はこちらのページからお願いたします。

 

BRIngお問合せ先

河地 有木(量子科学技術研究開発機構量子ビーム科学研究部門高崎量子応用研究所)
kawachi.naoki★qst.go.jp

田野井 慶太朗(東京大学大学院農学生命科学研究科)
uktanoi★g.ecc.u-tokyo.ac.jp

古川 純(筑波大学生命環境系)
furukawa.jun.fn★u.tsukuba.ac.jp

※ 上記の「★」記号を「@」記号 に置き換えて下さい。

 

 

RIを使うメリット

植物を含め生命を理解する上で生体内を駆け巡る様々な物質の動きを捉えることは重要です。生体内の物質の動きを捉える上で、RIを使うメリットは以下の2点挙げられます。

1.RI標識した物質の生体組織内の分布を非侵襲で可視化することができます。

汎用されている蛍光・発光物質で標識した場合、これらの光は生体自身で遮られやすいのですが、放射線ならば格段に透過しやすいので、生体内深いところまで検出が可能です。

2.RI標識では見るべき対象物質の性質が変化しません。

蛍光・発光物質での標識では分子量が大きく増加することに加え化学的性質が変化する可能性も大いにあり得ます。また、植物研究では元素そのものを追跡したい場合がありますが、この場合はトレーサーとして同位体を用いる方法しかありません。

生命現象を正確に捉えようとするとき、物質動態を正確に捉えることが益々重要になってきます。こうしたニーズに対し、RI標識物質をイメージングにより捉える研究手法が現況最も汎用的かつ実用的であると言えます。

 

 

植物RIイメージングの原理と得られるデータ

RIで標識した目的物を植物に取り込ませるトレーサー実験や、X線を用いた元素の可視化手法により静的画像、動的画像が得られます。

 

トレーサー実験による植物RIイメージングの原理

  ①目的物のRI標識

目的とする物質(元素、化合物、タンパク質等)をRIで標識したものを放射性試薬として用います。化合物については自身で標識しないで、市販品のRI標識化合物を用いる場合もあります。

  ②植物への取り込み

放射性試薬を植物体の根や葉などから吸収させます。

  ③イメージング装置で検出

使用するイメージング装置に応じて植物体を調整し、そこに含まれるRIの分布を検出します。多くのイメージング装置は低侵襲でそのまま計測することが可能です。

 

トレーサー実験により得られるデータ(静的画像(スタティック))

植物体をそのまま、あるいは切片化することで、RI標識した目的物のサンプリング時における局在情報を得ることができます。以下の例は、イメージングプレートを用いたイネにおける109Cdの個体レベル(左)と組織レベルの局在解析(右)。

 

トレーサー実験により得られるデータ(動的画像(ダイナミック))

非侵襲的な手法を用いて元素局在の連続画像を得ることができます。以下の例は、PETISを用いた矮性イネにおける65Znの分布の変化。

 

X線を用いた元素の可視化手法から得られるデータ(静的画像(スタティック))

RIを取り込ませていない植物であっても、切片化することで複数元素を対象とした元素のサンプリング時における局在情報を得ることができます。以下の例は、マイクロPIXE法によるイネ葉身断面における元素局在。青:ケイ素(Si)、白:カリウム(K)、緑:カルシウム(Ca)、赤:亜鉛(Zn)。

*画像は以下の文献より引用した。
植物科学における放射線イメージング, RADIOISOTOPES, 68, 643–657(2019)

 

 

植物RIイメージング研究に関するレビュー

元素の動態を解析する植物RIイメージングという新たな方法論について、イメージング装置や実際の植物を対象としたRIイメージング実験に要求される性能を軸に、この技術を解説しています。

発刊年月 タイトル 著者
2019年9月 植物科学における放射線イメージング 鈴井伸郎,河地有木,古川 純,田野井慶太朗
2016年4月 植物研究に求められるRIイメージング技術とは 河地 有木

 

 

イメージング元素一覧

植物RIイメージング研究にはRIが必要になりますが、特にポジトロン放出核種の場合は、半減期が短く、市販されていないものが多いため、実験者自身が製造する場合もあります。ここでは、日本アイソトープ協会から購入できる核種、短寿命RI供給プラットフォームから供給できる核種、PETISとRRIS等で実績がある核種を紹介します。目的とする核種を入手する際にお役立てください。

イメージング元素一覧(核種リストから)

 

 

イメージング装置一覧

植物における必須元素や有害元素の吸収・移行・蓄積する生理機能の解明においては、RIとイメージングプレートを使用するオートラジオグラフィ法がこの分野の研究に大きく貢献してきましたが、実験時に対象となる生理活性を停止してしまうデメリットを持っています。近年、このRIを生きた植物体の根や葉に吸収させ体内を移行する「動き」を画像化するイメージング装置が開発されてきました。ここでは、それらについてご紹介します。

 

装置の一般的な特長

PETIS RRIS GREI PIXE IP IP ※MAR、RLG
主な特徴 ・ポジトロン放出核種が検出可能

・定量に有利

・ベータ線を放出する核種が検出可能

・多くの購入できる核種

・複数のガンマ線を放出する核種を同時に検出可能 ・高解像度の分布画像(3Dも可、多元素も可)が入手可能 ・低コストで分布画像が入手可能 ・高解像度の分布画像が入手可能
取得できるデータ ダイナミック ダイナミック ダイナミック スタティック スタティック スタティック
検出する放射線 ポジトロン放出核種由来のガンマ線 ベータ線(シンチレータで光に変換し撮像) ガンマ線 特性X線 全て可
3Hを含めて当協会が提供できるRIはすべて検出可能
全て可
3Hを含めて当協会が提供できるRIはすべて検出可能
同一試料での複数回計測 基本的には不可 基本的には不可 基本的には不可
画像サイズ 十数センチ角(A5サイズ) 数十センチ角 十数センチ角程度 数ミクロン角程度(細胞レベルが対象) 数十センチ角まで対応可 数センチ角まで対応可(組織レベルが対象)
実績のあるモデル植物 シロイヌナズナ、イネ、ダイズ等 シロイヌナズナ、イネ等 イネ等 イネ等 多種多様 イネ等
実験難易度 中程度(実験手法はある程度確立されている) 中程度(実験手法はある程度確立されている) 高程度(測定データを用いた画像解析は研究対象) 中程度(実験手法はある程度確立されている) 低程度(実験手法は既に確立されている) MARは高程度、RLGは低程度
実験コスト 中程度(装置の立ち上げにはコストがかかる) 中程度(装置の立ち上げにはコストがかかる) 高程度(装置の立ち上げにはかなりのコストがかかる) 中程度(限られた施設利用のみであれば低コスト) 低程度(多数のRI施設で実施可能) 低程度(多数のRI施設で実施可能)
装置保有施設 QST 高崎量子応用研究所

東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター

東京大学大学院農学生命科学研究科アイソトープ農学教育研究施設 筑波大学アイソトープ環境動態研究センター QST 高崎量子応用研究所 イオン照射研究施設

QST放射線医学総合研究所

多くのRI施設 多くのRI施設

 

各イメージング装置の特長

PETIS(PETIS: Positron Emitting Tracer Imaging System)

RRIS(Real-time radioisotope imaging system)

GREI(Gamma-ray Emission Imaging)

PIXE(Particle Induced X-ray Emission)

ImagingPlate(IP)

ImagingPlate(IP) ※凍結切片法によるMicro-Autoradiography(MAR)およびラジオルミノグラフィ(RLG)

 

FAQ

よくある質問に対してBRIngメンバーがお答えします。

質問 回答
植物RIイメージングでどのようなデータが取得できるの? イメージング画像が取得できるのはもちろんですが、以下のデータを得ることができます。

・元素の分布:元素の分布(イメージング装置によっては3次元で)に加え、代謝産物の分布が分かります。また、定量値としてデータが取得できます。

・元素の分布の時間変化:吸収、輸送、蓄積等の速度が分かります。また、個体差の程度も分かります。

・同一個体での時間的変化:低侵襲なので繰り返し実験を行うことができ、個体差間を気にすることなく、環境の変化に応答した生理が起因となる体内元素動態の変動が分かります。

イメージング研究におけるRIの強みは? ・化学的挙動:化学的な挙動はもとの元素、化合物とほぼ同じですので、動態を解析するような実験において強みを発揮します。

・検出感度の高さ:RIを用いる実験は、一般に蛍光等と比較すると検出感度が大きいため、極微量でも検出が可能です。

・優れた定量性:放射性試薬から出る放射線(特にガンマ線)は物質透過性に優れていますので、生きたまま植物の深部に集積した元素を画像化でき、その分布状況を定量的に解析できます。

元素動態だけじゃなく、ホルモンもイメージングもできる? オーキシンなどの植物ホルモン等の動態もイメージングできる場合があります。その場合は、植物ホルモンをRI標識する必要がありますので、その分実験難易度が高くなります。
自施設にイメージング装置が無い場合は? BRIngメンバーにこちらからお気軽にご相談ください。コンサルティングいたします。
自身の研究にイメージング装置が必要かどうか分からない場合は? 着目する元素の分布だけが見たいのであれば、IPを用いたオートラジオグラフィが実験難易度が低いのでよいでしょう。一方で、元素の動態(吸収、輸送、蓄積等の速度)を知りたい場合は、着目する元素の動態を非破壊的にイメージングできる装置(PETIS、RRIS、GREI)が適しています。
イメージング実験の一連の試験の費用の相場観は? 価格を提示することは難しいですが、大きく費用がかかる項目としては以下があります。また、新規の実験の場合は条件検討が必要であったりしますので、さらに費用がかさむことも考慮しておきましょう。BRIngメンバーにこちらからお気軽にご相談ください。
・核種の製造費用(製造する場合)
・核種の購入費(市販品の場合)
・機器の利用料金(RI施設によって異なります)
イメージング実験ではどのくらい被ばくする? 多くても数μSv程度の被ばくですので、正しくRIを扱えば心配ありません。RIの取扱いについてさらに知りたい場合は、放射性試薬の安全取扱ガイドをご覧いただき、不安な場合は施設の担当者に相談しましょう。
植物RIイメージングに関する情報を収集するコツは? 最先端の情報については、専門分野の研究者から情報収集するのがよいでしょう。是非、BRIngのメーリングリストをご活用ください。
植物RIイメージング研究の専門家を目指す場合は? 植物RIイメージング研究を専門としているラボはそう多くはありません。
興味がある研究テーマを担当するBRIngメンバーにお問合せください。

 

 

リンク集

関連団体等のリンク集になります(別ウィンドウが表示されます)。

分類 名称 説明
施設関連 QST 高崎量子応用研究所 PETIS、PIXEを保有する施設です。
東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター PETISを保有する施設です。
東京大学大学院農学生命科学研究科アイソトープ農学教育研究施設 RRIS、MAR、IPを保有する施設です。
筑波大学アイソトープ環境動態研究センター GREIを保有する施設です。
学会関連 日本土壌肥料学会 植物RIイメージングの発表が多くあります。
日本植物生理学会
日本生物工学会
IEEE Nuclear and Plasma Sciences Society (NPSS) 
日本アイソトープ協会 理工・ライフサイエンス部会 本部会の植物RIイメージング利用推進専門委員会と連携して、本コンテンツを作成しています。
アイソトープ・放射線研究発表会 アイソトープに関する様々な専門分野の研究者が、各分野間の知見と技術の交流を図る研究会です。
その他 研究日誌 東京大学大学院農学生命科学研究科アイソトープ農学教育研究施設 田野井が研究者、大学教員としての活動をご紹介します。少しでも大学教員を目指す人が増えるとよいな、と思いながら情報発信します。

 

 

相談窓口

植物RIイメージングに限らず、通常のトレーサー実験についてもご相談をお受けいたします。
ご自身の研究テーマに植物RIイメージング技術が活用できるか等、ご興味がある方はお気軽にご相談ください。BRIngのメンバーが解決いたします。

 

相談の流れ

ご相談は以下のメールアドレスよりお申し込みください。
相談の内容にもよりますが、2~7営業日程度で別途メールにてご連絡いたします。
引き続きサポートをご希望する場合は再度ご連絡ください。

 

 

問い合わせ先

公益社団法人日本アイソトープ協会
医薬品・試薬課
TEL:03-5395-8033
FAX:03-5395-8055 (0120-012895 注文専用)
Mail:shiyaku★jrias.or.jp
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