基礎的な用語、定義の理解

基礎的な用語

 

放射能

放射能とは、放射性核種と呼ばれる原子が放射性崩壊を起こして別の原子になる性質のことを言い、このプロセスには何らか放射線の放出を伴います。原子内の陽子の数が元素を決定します。例えば、6個の陽子を有する原子は炭素であり、一方、8個の陽子を有する原子は酸素です。同一の陽子数で、中性子数が異なるものを同位体と呼び、放射能を持つものを放射性同位体、持たないものを安定同位体と呼んでいます。また、放射性物質とは放射能を持つ物質の総称のことです。

 

放射性崩壊

不安定性を持つ原子核が放射線を放出することにより、他の安定な原子核へ変化する現象のことです。放射性物質は安定した物質になるまで崩壊していきますが、このプロセスは測定により検出することが可能です。

 

放射性核種

放射性核種は、特定の元素の放射性同位元素のことです。例としては、ヨウ化ナトリウムとしての125I(タンパク質の標識用)およびクロム酸ナトリウムとしての51Cr(細胞傷害性試験用)が挙げられます。放射性核種は塩として提供されることが多く、溶液中で放射性核種とその対イオンに解離します(例:51塩化クロム)。

 

半減期

半減期は、放射性同位体が放射性崩壊によって、その半分が別の核種に変化するまでにかかる時間を言います。半減期は放射性同位体ごとに決まっており、半減期が長短により放射性試薬の使用期限に影響します。以下に例を示しますが、

32P(半減期:14.3日)は数週間しか使えません。
33P(半減期:25.4日)は1ヶ月以上使用できます。
35S(半減期:87.4日)は3~4か月間使用できます。

 

放射性標識化合物

放射性標識化合物は、一つ以上の位置で放射性原子に化学的に結合している化合物です。例としては、32P-ATP、3H-チミジン、35S-メチオニンなどが挙げられます。

 

 

放射性試薬

放射性標識化合物、あるいはRI単体を指します。放射性試薬はトレーサーとして用いて、系内における物質の移動や分布、化学反応の過程などを調べる用途で用います。

 

密封線源、非密封線源

形態上の違いからRIは密封線源、非密封線源に分けられます。密封線源とはカプセルに密封されていたりするため、通常の取扱いでは漏れて汚染が広がる可能性が少ないものを指します。一方で、本コンテンツで対象とするRIは液体状のものが多く、汚染が広がる可能性があり、それらは非密封線源と呼びます。研究者によっては、放射性試薬のことを単にRIと読んだり、非密封RIと読んだり、様々な呼び方をしています。

 

 

基礎的な定義

 

標識化合物の表記方法

化学名の後には、カンマに続き括弧があり、括弧内には放射性標識の位置や種類が記載されています。

例:Glutamic acid, L-[14C(U)]-

 

標識位置

アルファ/ガンマ位に33P/32P標識したATPの構造を以下に示します。赤色のリン酸(P)は標識位置を示します。

 

標識化合物の分類

標識の状態によって以下のように分類されます。放射性試薬を選ぶ際のヒントにしましょう。

 

特定(S)標識化合物

標識位置が明らかな場合は、その位置が数字で示されます。特定の位置への標識率は95%以上のものを指します。

例:Ornithine, L-[1-14C]-

名目(N)標識化合物

標識位置がある程度予測されるが、特定(S)標識化合物ほど明確でなく、特定位置への標識率が95%未満の場合を指します。

例:Estradiol, [2,4,6,7,16,17-3H(N)]-

全般(G)標識化合物

様々な位置にランダムに標識されていますが、標識位置にかたよりが見られるものを指します。

例:Daunomycin, [3H(G)]- (NET582)

均一(U)標識化合物

すべての位置にほぼ均一に標識されているものを指します。

例:Glutamic acid, L-[14C(U)]-

 

放射能の単位

Bq(ベクレル)

放射能の強さを表す単位です。1 Bq = 1秒間に放射線を出して変化する原子の数のことです。

 

dpm

上記のBqは1秒間あたりですが、dpmは1分間あたりに放射線を出して変化する原子の数のことです。

 

Ci(キュリー)

特にアメリカではBqの代わりにCiという単位を用いる場合も多く、海外製品の記載もCiの場合もありますので知っておきましょう。
例)
1Ci = 3.7×1010Bq=2.22×1012dpm
1μCi =3.7×104Bq=2.22×10dpm

 

比放射能・放射能濃度

標識化合物には、RIで標識されていない非標識化合物も含まれます(含まれていないものは無担体(キャリアフリー)と呼びます。)そのため、標識化合物が多く含まれている方が実験に都合がよく、計測感度が向上します。そのため、着目する化合物がどのくらいRI標識されているかを表すために比放射能が定義されています。また、比放射能と似たものとして放射能濃度があります。比放射能は化合物とその標識化合物との量の関係を表しているのに対し、放射能濃度は溶媒も含めた試料中の標識化合物の量として表されます。

 

比放射能

比放射能は、使用する試薬を決定し、最適なデータを取得するための重要な要素の一つです。

放射性核種の比放射能は、Ci/gまたはCi/mmolで表され、対イオン分は含みません。Ci/gからCi/mmolに、またはその逆に変換する場合は、核種自体の分子量を使用して計算します。包装の前に未標識分子を分離する方法で化合物を精製しない限り、放射能崩壊が進行するにつれて放射能標識化合物の比放射能は経時的に減少します。しかし、放射性核種がキャリアフリー(同じ元素の非放射性同位体を含まない状態)として供給された場合、放射性核種が崩壊によって減少しても、比放射能は経時的に変化しません。これは、崩壊の後に放射性核種が別の元素になるためです。(例:90Yは崩壊して90Zrになります。ここで、比放射能はYの質量あたりの放射能の量を指します。)。

また、放射性標識化合物に対する比放射能は、放射性同位体に対する理論的な最大比放射能よりも高くなる場合がありますが、これは化合物が2つ以上の位置で標識されているためです。

さらに、ラベルしていない化合物を添加することで、比放射能を変えることもできます。比放射能が高い標識化合物を使うと、一般に測定感度は向上しますが、細胞や動物の正常な代謝機能が阻害されたり、定量が不正確になりやすい等の問題もあります。

 

最大比放射能

Ci / mmol、Ci / mgまたはCi / gで示される放射能の理論的な最大値のことです。ですので、溶液中の分子のすべてが放射性標識されている場合の値になります。

 

放射能濃度

放射能濃度は単位体積または単位質量あたりの放射能を意味し、Bq/ml、Bq/gなどで表されます。購入する放射性試薬の選定の際に必要になる数値です。

また、モル濃度も試薬選定には大切な値です。

モル濃度(µM)=単位体積あたりの標識および非標識生成物両方の総モル量

放射能濃度とモル濃度は線形関係にあります。例えば、以下の製品の場合は比放射能(SA)は同じですが、放射化学濃度とモル濃度は異なりますので、自身が目的とする実験に合わせた試薬を選定しましょう。

 

比放射能、放射能濃度の記載例

以下に32P-UTPの製品例を示しますが、製品によって比放射能や放射能濃度が異なる場合がありますので、製品選びの際は注意しましょう。

32P-UTP 比放射能(Ci/mmol) 放射能濃度(mCi/mL) モル濃度
製品A 800 Ci/mmol 10 mCi/mL 12.5 µM
製品B 800 Ci/mmol 20 mCi/mL 25 µM
製品C 800 Ci/mmol 40 mCi/mL 50 µM

 

純度

標識化合物の純度については、対象によって以下の3つがあります。

 

化学的純度

化学的純度=対象とする化合物(標識&非標識)/全体量

標識化合物には、対象となる標識化合物以外にも溶媒や放射性崩壊での生成物等の科学的な不純物があります。

 

放射化学的純度

放射化学的純度=対象とする化合物の放射能/全放射能

目的と異なる化合物に標識されていたり、標識化合物自身が分解したりした場合にこれらは放射化学的不純物となります。

 

放射核種的純度

放射核種的純度=対象とする核種の放射能/全放射能

対象とは異なる核種が不純物として入っている場合があります。

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