放射線による細胞死を抑制する新たなメカニズムを解明―オートファジーの新たな細胞保護機構

Isotope News2018年2月号より、ライフサイエンス分野、医学分野等に関連する記事をご紹介いたします。

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著者:清水 重臣,鳥居 暁
概要(はじめに):細胞が放射線に曝露すると,DNA切断,塩基傷害,糖鎖傷害等が直接的に,活性酸素等を介した傷害が間接的に誘導きれる。これらの内,DNA二重鎖切断がその後の細胞応答に決定的な役割を果たしていると考えられている。DNA二重鎖切断に伴う細胞応答は,まずDNA傷害の認知から始まる。この過程には,RAD9,RAD1,RAD17,HUS1等のタンパク質が関与している(図1)。これらのタンパク質から発信されるシグナルはATMを介して下流に伝えられる。ATMは放射線高感受性遺伝病であるAtaxia-Telangiectasiaの疾患原因遺伝子である。ATMの機能上昇により,CHK1/CHK2を始めとする下流のリン酸化酵素群(effector kinase)が活性化される。その結果,癌抑制遺伝子であるp53の発現上昇を介して細胞周期停止,DNA修復,アポトーシス等の細胞応答が実行される。これら3つの細胞応答は独立した現象ではなく,まず細胞の増殖を停止させ,この間にDNAを修復し,修復が充分達成されない場合にはアポトーシスを誘導するという具合にお互い連携しあって,DNA傷害の無い細胞を選択的に生存させる機構を形成している。また,これと並行してオートファジーも誘導され,細胞の生存に貢献している。本稿では,これら細胞応答のうち,オートファジーの分子機構や役割,アポトーシスとの関連性に関して,最近の筆者らの知見を紹介する。