放射線によるニホンナシの自家和合性突然変異体の獲得 ─すべての品種を結実させられる花粉側自家和合性品種育成を目指して─

Isotope News 2017年12月号より、ライフサイエンス分野、医学分野等に関連する記事をご紹介いたします。

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著者:間瀬 誠子

概要(はじめに):バラ科果樹には,ナシ・リンゴ・サクランボ等,正常な花粉と花柱(雌しべ)を持っていても自分の花粉による受粉(自家受粉)では受精・結実せず,他品種の花粉による受粉(他花受粉)時のみ結実する自家不和合性を示す種が多い。自家不和合性の果樹を安定生産するためには,相互に受精可能な2品種以上を栽培する必要があり,受粉用の蜂を飼育して虫媒受粉を促進するか,人工受粉を行うことが推奨されている。しかし,これらの対策には多大な労力がかかるため,経営規模拡大の妨げや生産コスト増加の一因となっている。この問題を,自分の花粉で結実できる自家和合性品種の開発・普及により解決することを目的に,バラ科果樹の自家不和合性システムについての研究が進められている。研究には希少な自家和合性の自然突然変異品種及び人為的に獲得された突然変異体が用いられ,関連遺伝子群の同定に貢献すると共に,自家和合性品種の開発のための交配親として活用されてきた。本稿では,農研機構が新たなニホンナシの自家和合性突然変異体として発表した,γ線照射による花粉側自家和合性突然変異系統の原因遺伝子及び育種素材としての利用可能性について紹介する。