低分子抗体やペプチドを用いるがんのイメージングと治療:腎臓負担軽く

Isotope News 2017年12月号より、ライフサイエンス分野、医学分野等に関連する記事をご紹介いたします。

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著者:荒野  泰

概要(はじめに):1906年にPaul Ehrlich により提唱された “Magic Bullet”の概念は90Y標識抗CD20抗体によるリンパ腫の治療により具現化され,抗体を運搬体に利用して特異的にがん細胞へ細胞殺傷性アイソトープを送達する,がん治療の有効性が明らかとなった。また,診断用放射性核種で標識した抗体やペプチドを投与してがんへの集積性や体内動態を画像から評価した後,治療用放射性核種で同じ抗体やペプチドを標識して,がんの治療を行うradiotheranosticsが個別化医療の観点からも注目を集めている。
一方,がん全体の80%を占める固形がんは,不均一な抗原分布やその高い組織内圧力など液性がんとは異なる特性を持ち,抗体が血管壁を透過して標的抗原に結合するまでに多くの障害が存在する。これらの障害はがんの成長に伴って増大すること,抗体の組織移行性はその分子サイズの影響を受けることから,Feb, F(ab’)2 single chain (sc) Fv fragments や diabody などの低分子抗体がRIの運搬体に有用である。合成ソマトスタチン誘導体であるoctreotide などの分子サイズの小さい抗腫蕩ペプチドの利用も進められている。これらの低分子抗体やペプチドは,IgG抗体に比べて腫場組織への速やかな移行と分子サイズに応じた組織内での均一な分布を示し,アイソトープ治療に適した動体特性を有する。血液からも速やかに消失することから,90Y標識IgG抗体で観察される骨髄被ばくの低減にも有用である。しかし,アルブミンよりも分子サイズの小さなRI標識低分子抗体やペプチドを投与した場合,腎臓に高い放射活性が観察される。これは金属RIで標識した場合に顕著である。腎臓への集積はアイソトープ治療の大きな障害となることから,集積原因の解明とその対応が長年望まれていた。