代謝型グルタミン酸受容体 PET イメージングの新展開 ─パーキンソン病診断バイオマーカーとしての可能性─

Isotope News 2017年4月号より、ライフサイエンス分野、医学分野等に関連する記事をご紹介いたします。

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著者:山﨑 友照

概要(はじめに):パーキンソン病(Parkinson’s disease: PD)は,脳の線条体領域において,神経伝達物質であるドーパミン(dopamine: DA)及びアセチルコリンの絶対量の不均衡により,「ふるえ」,「強剛」,「無動」,「姿勢障害」などの運動障害や認知機能障害を引き起こす神経変性疾患であり,アルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)に次いで多くの雁患者数を有する脳疾患の1つである。PDの病因は諸説あるが,ADの病理所見でみられるβアミロイドと同様,αシヌクレイン(ASN)と呼ばれる異常タンパク質の蓄積が神経細胞の障害を引き起こすと考えられている。
神経細胞は,障害を受けると細胞内に貯蔵していたグルタミン酸を細胞外へ放出することが知られている。通常,グルタミン酸は脳内で興奮性の神経伝達物質として機能し,様々な神経線維の分化や多様生の獲得に寄与するが,過剰な分泌は神経毒性を発揮する。シナプス間隙のグルタミン酸濃度は,イオンチャンネル型やGタンパク共役型の代謝型グルタミン酸受容体によって巧妙に制御されている。中でも,グループⅠ型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1及びmGluR5)は,後シナプスに発現しており,興奮性の神経伝達を管理している重要な受容体であることが分かってきており,近年,様々な研究報告により,これら受容体の機能や発現量の異常が様々な脳神経疾患に寄与していることが示唆されている。このような背景から,mGluR1とmGluR5を標的とした分子イメージング研究は,PDをはじめとする神経変性疾患の機序解明や治療薬開発に大きく貢献することが期待できる。
Positron Emission Tomography(PET)は,18Fや11C等のγ線を放出する放射性同位元素で標識した薬剤を生体に投与することで,特定の分子の動きや変化を生きたままの状態で定性的かつ定量的に測定できる分子イメージング研究には欠かすことのできない先進のモダリティである。
本稿では,このPETを用いて,人の変異ASNを遺伝的に挿入されたパーキンソン病モデル動物の脳内mGluR1及びmGluR5の経時的変化を生きたままの状態で長期間にわたり観測し、定量的に測定したので、その結果を紹介する。