植物における放射性カドミウムの非破壊イメージング

RADIOISOTOPES 62 巻 (2013) 1 号より、ライフサイエンス分野、医学分野等に関連する記事をご紹介いたします。

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著者:鈴井 伸郎

抄録(はじめに):農作物に含まれるカドミウム(Cd)を低減することは,食糧の安全確保のために解決しなければならない世界的な課題である。この問題を解決するために,植物科学,特に植物栄養学の分野において,数多くの精力的な研究がなされてきた。具体的には,植物がCdを蓄積しないための栽培条件の検討や,低Cd蓄積品種の作出,あるいは植物にCdを吸収させることでCd汚染土壌を浄化する「ファイトレメディエーション」のための高Cd蓄積品種の作出といった研究が挙げられる。さらに,近年の分子生物学の発展に伴い,植物体内におけるCdの吸収・輸送・蓄積に関与する輸送タンパク質(トランスポーター)が数多く同定されている。特にイネにおいては,コメのCd汚染が国内で深刻な問題となっていたため,Cdトランスポーターのほとんどが日本の研究者により同定されており,植物のCd輸送メカニズムについての学術的に意義のある報告が数多くなされている。そして2012年,(独)農業環境技術研究所等により,Cdをほとんど含まないコシヒカリがイオンビーム育種を用いて作出されたことで,コメのCd汚染問題については解決の道筋が見えてきたと言える。
こうした植物のCd輸送メカニズムに関する研究に対して,放射性Cdは多大な貢献をしてきた。古くは1970年代に,109Cdを用いたトレーサ実験によりCdの吸収時期や吸収経路が明らかにされた研究例を始めとして,数多くの研究がなされている。一方で,高度化した放射線検出器を利用することで,Cd動態を「非破壊」で撮像するイメージング研究が近年活発に行われている。本稿では,放射性Cdを利用した「非破壊イメージング」が植物のCd動態研究にどのように利用されているかについて簡単に紹介したい。