概要
主な準備物
製品とカタログ番号
プロトコル概要
プロトコル詳細
・フィルタープレートをポリエチレンイミン(PEI)でコーティングする方法
・飽和アッセイ
・競合アッセイ
アッセイの最適化
ガイドとその他のリソース
ヒントとよくある質問
トラブルシューティング
引用
概要
本アッセイは、受容体の特徴を決定することや、特定の化合物の受容体結合阻害能を測定することで医薬品候補化合物を評価するために利用されます。受容体とリガンドの結合が平衡状態に達した後、真空マニホールドまたはセルハーベスターを使用して受容体サンプルをろ過することによって、受容体-リガンド複合体から過剰な遊離リガンドを速やかに分離することができます。フィルターは、一般的にガラス繊維フィルターが使用されています。本アッセイは、細胞全体にも使用できますが、通常は細胞膜を使用して行われます。
放射性リガンドを選択する際には、いくつか留意点があります。
・高比放射能:
高比放射能を有する放射性リガンドは、リガンド結合アッセイに非常に適しています。例えば、125 I標識リガンドのいくつかは最大比放射能で提供されています(1つの125 I標識部位があるものは2200 Ci / mmol、2つの125 I標識部位があるものは4400 Ci / mmol)。これは、バイアルに入っているリガンドのほぼすべての分子が放射性標識されていることを示しています。3H標識の場合、理想的には20 Ci / mmol以上の比放射能を持つものを選びます。3H当たりの最大理論比放射能は29Ci / mmolです。この値を超える比放射能は、平均して、リガンドの各分子が少なくとも1つの3Hを有することを示しています。
・低い非特異的結合:
疎水性リガンドは一般により高い非特異的結合を示します。非特異的結合を減らすためにBSAでフィルターをコーティングするという方法もあります。また、洗浄又は結合緩衝液中にBSA、塩や界面活性剤を添加することでも、非特異的結合を減少させるのに役立ちます。放射性試薬がシラン処理されたバイアルに梱包されている場合、リガンドがやや疎水性であることを示している可能性があります。
・高い放射化学的純度:
90%を超える放射化学的純度を有することが理想です。放射化学的純度は経時的に低下し、実際の分解速度は経時的に加速します。
・高い選択性:
リガンドが受容体に対してより選択的であるほど、測定結果はより良くなります。また、目的の受容体を過剰発現させた細胞膜を使用することにより、細胞膜で内在的に発現している受容体の寄与を減らすことも可能です。
・安定性:
長期間にわたって放射性リガンドを使用する必要がある場合は、安定性が重要な要素となります。例外はありますが、125I標識リガンドは一般に製造日から1〜2ヶ月以内に、3Hの場合は通常、製造日から3〜6か月以内に使用します。
・エネルギー:
3Hからのベータ線をシンチレーションカウンターで測定することができます。ベータ線はシンチラントと相互作用して光子を生成し、光子は検出器によって測定されます。125 Iは、ベータ線とガンマ線の両方を放出します。ガンマカウンターしか施設にない場合は、125 I標識の放射性リガンドを使用してください。
主な準備物
フィルターマットと真空マニホールドを使用する場合:
・目的の受容体を発現している細胞膜
・放射性標識リガンド
・コントロールとしての非放射性標識リガンド(非特異的結合を計測するため)
・必要に応じたリガンドと試験化合物
・フィルターマット
・シンチレーションカクテル
・真空マニホールドまたはセルハーベスター
・検出器
セルハーベスター付きのUniFilterプレートを使用する場合:
・目的の受容体を発現している細胞膜
・放射性標識リガンド
・コントロールとしての非放射性標識リガンド(非特異的結合を計測するため)
・必要に応じた試験化合物
・シンチレーションカクテル
・セルハーベスター
・検出器
製品とカタログ番号
Plate type | Filter type | Well format | Plates | Catalog number |
UniFilter | GF/B | 96-well | 50 | 6005177 |
GF/C | 96-well | 50 | 6005174 | |
PEI-coated UniFilter | GF/B | 96-well | 50 | 6005277 |
GF/C | 96-well | 50 | 6005274 |
プロトコル概要
詳細なプロトコル
ポリエチレンイミンコーティングフィルタープレート
ポリエチレンイミン(PEI)でのフィルタープレートの処理により、フィルターへのリガンドの結合を最小限にすることができます。PEIはガラス繊維フィルターの負電荷を中和するカチオン性ポリマーです。
PEIでコーティングするには:
1、0.1%から0.5%のPEIに30~60分浸す(4℃)
2、PEIを除いた後に、冷やしたバッファーで洗浄する
・担体タンパク質、血清、または界面活性剤による処理によっても、フィルタープレートへのリガンドの結合を最小限にできます。BSAによる事前のコーティングは、疎水性リガンドおよび化合物のプラスチック表面への結合を減少させるのに役立ちます。
飽和アッセイ
サンプルプロトコルはこちらをご参照ください(PerkinElmer社のサイトへ移動します。)
アッセイの最適化
・1ウェルあたりの細胞膜量
・結合緩衝液の最適化:緩衝液はあらゆる結合アッセイにおいて非常に重要な要素です。 塩濃度、キャリアタンパク質の濃度、ならびに緩衝能および緩衝液の種類は最適化する必要があります。新しい緩衝液を使用する場合、事前に既知のリガンドを用いて確認しておきます。
・インキュベーション時間と温度:結合平衡は温度と時間に依存します。
・洗浄バッファーの最適化、洗浄ステップ数
・標準化合物の濃度反応曲線の評価
ガイドと他のリソース
・NIHの – フィルターベースおよびSPAベースのリガンド結合アッセイに関する情報が掲載されています。
・IUPHARデータベース – リガンドの親和性に関する受容体情報、さまざまな受容体と結合するリガンドのリスト等が掲載されています。
ヒントとよくある質問
・リガンドの濃度は、各希釈液の少量のサンプルを測定し、dpm(1分間あたりの壊変数)をモル濃度に変換することによって決定します。希釈系列を正確な調製は、EC50およびIC50の値に反映されます。
・放射性リガンドは、チューブ、ピペットチップ、アッセイプレートまたはフィルターなどに非特異的に結合します。これはリガンド量の減少につながる可能性があります。非特異的な結合を調べるには、メンブレンなしで実験を行います。放射性リガンドがアッセイのどの工程で失われているかを調べることができます。
・シンチラントを添加する前にフィルターが完全に乾いていないと、フィルター内に存在する残留水がシンチラントと相互作用して計数効率が低下する可能性があります。乾式フィルターは、湿ったフィルターよりも大きなシグナルが得られるので、相対的にシンチラント量が少なくて済みます。ただし、フィルターを完全に乾燥させることは手間がかかるため、スクリーニング用途には向かないかもしれません。そのような場合は、湿ったフィルターと互換性のあるカクテルを使用してください。
・シリコン処理チューブおよびピペットチップの使用は、プラスチックへのリガンドの吸着を防ぐことによってリガンド量の減少を防ぐことができます。
トラブルシューティング
問題 | 原因 | 解決策 |
非特異的結合が高い場合 | 細胞膜調整の失敗 | 新しい膜調整を試してください |
放射性/非放射性リガンドの分解 | 新鮮なロットまたは新たに調製したリガンドを使用してください | |
非特異的結合をしやすいリガンド | バッファーに担体分子(BSAまたはゼラチン)を添加 | |
フィルター | 担体分子を含む結合バッファーにあらかじめ浸しておく、またはフィルターをPEIでコーティングする必要があります | |
ポンプの問題 | 機器を確認してください | |
洗浄が不十分 | バッファーの組成と容量を調整してください | |
特異的結合がみられない場合 | メンブレン調整の失敗 | 新しいメンブレンで再度試す |
非放射性リガンドの劣化 | 新しいロットの非放射性リガンドを試す | |
非特異的結合をしやすいリガンド | バッファー(BSAまたはゼラチン)に担体分子を添加 | |
ポンプの問題 | 機器を確認してください | |
フィルターバッファーまたは洗浄バッファーの組成 | 組成を確認し、これらがアッセイに最適化されていることを確認してください | |
検出機器でのカウント数が少ない場合 | 細胞膜調整の失敗 | 新しい細胞膜を試します |
分解した放射性リガンド | 新しい放射性リガンドのロットを使用します | |
細胞膜または放射性リガンドの濃度が低すぎる | 濃度を上げます | |
非特異的結合をしやすいリガンド | バッファーに担体分子(BSAまたはゼラチン)が必要な場合があります。 | |
ガラス製品またはプレート | 一部のプラスチック製のプレート、チューブ、またはチップは、放射性/非標識リガンドの非特異的結合の原因となる可能性があります。 これらを実験前に確認しておきます。 | |
親和性が変化した場合 | 放射性リガンドの使用期限切れ | 放射性リガンドの新鮮なロットを使用する |
非標識リガンドの分解 | 新しい非標識リガンドを試す | |
非特異的結合をしやすいリガンド | バッファーに担体分子(BSAまたはゼラチン)が必要な場合があります。 ガラス製品への高い非特異的結合等。 | |
リガンドの不足 | 競合実験でのアッセイ容量の増加、細胞膜の量の減少、または放射性リガンド濃度の増加 | |
実験のばらつき | 非特異的な結合、または不均一な細胞膜の調製 | 18.5Gのニードルを備えつけたた1ccシリンジにで細胞膜溶液を均一にする |
非特異的結合をしやすいリガンド | バッファーに担体分子(BSAまたはゼラチン)が必要な場合があります。ガラス製品への高い非特異的結合等。gelatin); high non-specific binding on glassware | |
適していないガラス製品またはプレート | 一部のプラスチック製のプレート、チューブ、またはチップは、放射性/非標識リガンドの非特異的結合の原因となる可能性があります。 これらを実験前に確認しておきます。これらは非放射性標識リガンドの非特異的結合を引き起こします。 | |
適していない洗浄バッファー | バッファー組成を確認し、これらがアッセイに最適化されていることを確認してください | |
溶液の不安定性 | 新たに調製したリガンドまたは化合物を使用してみてください。別の放射性リガンドに切り替えるのも手です。 | |
操作/ピペッティングの問題 | 異なるサンプルまたは濃度間を移動する場合は、チップを切り替えることをお勧めします。粘着性のあるリガンドの場合、通常は新しいチップを入れ、溶液を上下に1〜2回ピペッティングしてから移し替えます。これは、ピペットチップの内側をプレコートするのに役立ち、ディスペンス時により多くのリガンドが移動します。 |
引用
- Esbenshade, T.A. et al. Pharmacological and behavioral properties of A-349821, a selective and potent human histamine H3 receptor antagonist. Biochem. Pharmacol 68, 933-945 (2004). Link
- Fujiwara, Y. et al. Mutual regulation of vasopressin- and oxytocin-induced glucagon secretion in V1b vasopressin receptor knockout mice. J Endocrinol 192, 361-369 (2007). Link
- Nourian, Z., Mulvany, M.J., Nielsen, K.B., Pickering, D.S. & Kristensen, T. The antagonistic effect of antipsychotic drugs on a HEK293 cell line stably expressing human alpha1A1-adrenoceptors. Eur. J. Pharmacol 596, 32-40 (2008). Link
- Schepmann, D., Frehland, B., Lehmkuhl, K., Tewes, B. & Wünsch, B. Development of a selective competitive receptor binding assay for the determination of the affinity to NR2B containing NMDA receptors. J Pharm Biomed Anal 53, 603-608 (2010). Link
- Verzijl, D. et al. Noncompetitive Antagonism and Inverse Agonism as Mechanism of Action of Nonpeptidergic Antagonists at Primate and Rodent CXCR3 Chemokine Receptors. Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 325, 544-555 (2008). Link