放射化学に関する各種計算

放射性試薬を使った実験をするためには、特有の計算が必要になります。まずは基礎的な定義や用語を覚えて、そこから計算方法を学びましょう。

 

納品日、検定日

 

フレッシュロット納品日

放射性試薬が製造された日から一番初めの納品日のことで、放射能濃度が最も高くなります。フレッシュロットをご希望の場合は、製品の納品予定日カレンダーからフレッシュロットの納品日(以下の図の黄色部分)をお調べください。

 

検定日(Calibration Date)

放射能濃度がデータシートに記載されている濃度と一致する日のことです。通常、製品が検定日より前に出荷されますので、データシートに記載されているよりも高い放射能濃度でお手元に届きます。

 

 

単位の変換

BqからCiへ、またはその逆に変換するには以下の式や表を参考にしましょう。

 

変換式

1Bq=2.7×10-11Ci= 1dps(decay per second)=60dpm(decay per minute)
1Ci=3.7×1010Bq=3.7×1010dps=2.22×1012dpm

 

変換表

To convert from __ to __: 掛ける数値
from Ci to Bq 3.7X1010
from Bq to Ci 2.7X10-11
from Ci to dpm 2.22X1012
from mCi to dpm 2.22X109
from dpm to Ci 4.50×10-13
from dpm to mCi 4.50×10-10
from Bq to dpm 60
from TBq to dpm 6.0X1013
from dpm to Bq 1.67×10-2
from dpm to TBq 1.67×10-14

 

 

計算のためのアプリ

パーキンエルマーから計算のためのアプリやオンラインツールがリリースされていますので活用してみましょう。

iPhone、iPad、またはApple用の無料アプリをダウンロード

放射化学計算オンラインツール

 

 

比放射能(Specific Activity)、放射能濃度(Concentration)、検定日(Calibration date)を調べ方

パーキンエルマーの製品の場合は、製品に記載の製品コードとロット番号等が記載されているデータシートをこちらからダウンロードしてください。
データシートには比放射能(Specific Activity)放射能濃度(Concentration)検定日(Calibration date)が記載されています(下記、赤丸)。
*パーキンエルマー以外の製品はデータシートが同梱され、そちらに記載されています。

また、使用日当日の比放射能と放射能濃度は放射化学計算オンラインツールを用いて計算します。

 

 

比放射能の調整

用途によっては、用いる化合物のmol濃度を必要な量まで上げるためにRI標識されていない化合物を添加して、比放射能を調整する場合があります。

一例として、ATP濃度を最終的に50μMに調整したいが、RI標識されたATPが1.7μMしかない場合に、RI標識されていないものを48.3μM分添加して実験しますが、この場合の計算のために、比放射能計算シート(Microsoft Excel形式)を用いると便利です。こちらからダウンロードできます。

比放射能計算シート

 

 

製品の内容量の計算

 

RI標識された化合物の場合

製品のデータシートが以下のようになっている場合は、内容量がデータシートに表示されます(下記、赤丸)。

 

データシートが以下の例のようになっている場合は、バイアル内の総放射能量とデータシートに表示されている放射能濃度から内容量を計算できます
総放射能(mCi)/放射能濃度(mCi/mL)=容量(mL)

 

RI単体(精製アイソトープ)の場合

多くのRI単体(精製アイソトープ)では、注文に応じて調製されるため、データシートに内容量が記載されていません。内容量は(検定日での)放射能濃度によって異なります。そのため、以下のように「検定日は出荷日からX日後です」と記載されていますので(下記、赤丸)、出荷日を知りたい場合は当協会までお問合せ下さい

 

まずデータシートから、在庫日(Stock Date)放射能濃度(Concentration)、および検定日(Calibration Date)を確認します。例えば、以下のデータを例として、その放射能濃度の求め方を示す。

データの例:
在庫日(Stock Date)= 2010年8月9日
在庫日における濃度(Concentration)= 196.68 mCi/mL
出荷日(Ship Date *当協会に問い合わせて確認)= 2010年8月24日
検定日(Calibration Date)= 2010年8月31日(出荷日の7日後)
在庫日から検定日までの合計日数= 22日

減衰を考慮して、次のように検定日の放射能濃度を計算します。

例:0.4417(22日間での86Rbの減衰係数 *データシート裏面のDECAY CHARTを参照)x 196.68mCi/mL(在庫日の濃度)= 86.87mCi/mL(検定日の濃度)

ここから、バイアルに入っている内容量を計算するには、注文した放射能量を検定日の放射能濃度で割ります。5mCiを注文した場合、(5mCi/86.87mCi /mL)= 0.058mL=58µLとなります。

 

mol濃度の計算(標識された化合物と標識されていない化合物が混ざっている場合)

データシートから放射能濃度比放射能を確認します(下記、赤丸)。

 

比放射能がCi/mmolで表示されている場合

以下のように放射能濃度を比放射能で割ります

例(3H-Thymidine):

濃度=1.0Ci/L=1.0mCi/mL

比放射能=83.2Ci/mmol

mol濃度は次のようになります。
(1.0Ci/L)/(83.2Ci/mmol)=0.012mmol/L=12μM

 

比放射能がmCi/mgで表示されている場合

分子量を調べて、以下の式を使用してください。
放射能濃度(mCi/mL)/比放射能(mCi/mg)×MW(mg/mmol)=mol濃度(mmol/mL)

mol濃度の計算(キャリアフリーの場合)
キャリアフリーのRIは、崩壊するにつれて各原子は異なる原子に変化します。結果として、放射能濃度とmol濃度の両方が経時的に減少しますが、比放射能は一定のままです(以下の例では、125Iが崩壊するにつれて、別の安定な元素(125Te)に変化します。 )。そのため、使用する日にmol濃度は依存します。

事前にRIの分子量を調べておきます。

125Iの例:
比放射能= 17.4 Ci / mg
125Iの分子量= 125mg/mmol

最初に、比放射能(Ci /mmol)を計算します。
(17.4Ci/mg)×(125mg/mmol)=2175Ci/mmol
キャリアフリーのRIでは、この値は時間が経っても一定のままです。

そして、例えば使用する日に放射能濃度として86.87mCi/mL(=86.87Ci/L)の値にしたい場合は、放射能濃度をCi/mmolで割ることでmol濃度を求めます。
(86.87Ci/L)/(2175Ci/mmol)=0.0399mmol/L =39.9 μM

 

標識率の計算

実際に何パーセントのS-adenosylmethionine(比放射能、78Ci/mmol)が標識されているか知りたい場合、簡単に求める方法としては、標識位置の数を考慮して、実際の比放射能を理論的最大比放射能で割ることで求めます。この化合物には3つの標識位置があります。3H、1つあたりの最大理論比放射能は約29Ci/mmolと知られているので、3つの位置で標識された分子の割合は78(実際の比放射能)/87(理論的最大比放射能、3x29Ci/mmol)= 89.7%と計算できます。
実際の3H標識されたS-adenosylmethionineの標識率を確認するには質量分析をする必要があります。

 

理論的最大比放射能

32P:9120Ci/mmol
33P:5000 Ci/mmol
35S:1488 Ci/mmol
3H :29 Ci/mmol
125I:2200 Ci/mmol
14C:62 mCi/mmol

 

dpmからmolへの変換

まずデータシートから比放射能を調べておきます。該当する場合は減衰を考慮に入れてください。

3H-thymidine(比放射能83.2Ci/mmol)の例:

測定したdpm(仮に100,000 dpmとする)をCiに変換します。
*1Ci=2.22×1012dpm
*計測したcpm(1分あたりのカウント数)からdpm(1分あたりの崩壊数)に変換するには、測定に使った検出器の計数効率を知る必要があります。計数効率とcpm、dpmには次の関係式があります。計数効率=cpsx100/dps

100,000 dpm /(2.22 x 1012 dpm / Ci)= 4.5 x 10 -8 Ci

そこから、Ciと比放射能を用いてmolを求めます。

4.5×10-8 Cix(1mmol/83.2Ci)=5.4×10-10mmol=0.54pmol

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