代表的な核種の特長

ここではライフサイエンス実験で登場する主要な核種の特長を抑えましょう。

 

3H 低エネルギーβ線(β)、半減期:12.3年、最大比放射能:0.355TB/mg、最大エネルギー:18.6keV

1. β線のエネルギーが極めて低いため、サーベイメータでの検出が困難であり、スミア法で実験台等の汚染チェックを行う必要があります。
2. 3H標識化合物を使用する場合は特に遮へいを行う必要ありませんが、肌から吸収されやすいので必ず防護用手袋を着用します。
3. 外部被ばくはほとんど影響ありませんが、体内に3H標識化合物を取り込んだ場合は内部被ばくを発生するため十分に注意します。
4. ALI(年摂取限度)は対象となる3H標識化合物により非常に差が大きいため考慮する必要があります。
5. 自己分解しやすい性質があるため、使用期間は1年程度を目安とします。

 

14C 低エネルギーβ線(β-)、半減期:5700年、最大比放射能:0.16GBq/mg、最大エネルギー:157keV

1. β線のエネルギーが低いため、サーベイメータでの検出が困難であり、スミア法で実験台等の汚染チェックを行う必要があります。
2. 1cmや3mm厚アクリルで遮へいすれば十分ですが、ある種の14C標識化合物は手袋を通して浸透する事があります。
3. 14C標識化合物はCO2ガスとして吸引する恐れがあるため,CO2ガスを発生させないよう注意し、必要に応じてドラフト内等の換気がよい所で作業します。
4 3Hと比較すると、半減期が長いこともあり、使用期間は化合物自体の安定性に左右されます。

 

32P β線(β-)、半減期:14.3日、最大比放射能:10.5TBq/mg、最大エネルギー:1.711MeV

1. ライフサイエンス研究で用いられる核種の中で最も大きいβ線エネルギーであり、不必要な被ばくを避けるため1cm厚アクリル等で十分に遮へいします。
2. 手指の被ばくも大きくなる事から、手指に装着するタイプの線量計を用いるようにします。
3. 半減期が短いので使用期間は2週間程度を目安とし、計画的に使用します。

 

35S β線(β-)、半減期:87.5日、最大比放射能:1.59TBq/mg、最大エネルギー:167keV

1. 亜硝酸ガスや硫化水素ガスとして発生する恐れがあるため吸引しないように注意する。特に、バイアル開封時はドラフト中で行います。
2. 1cmや3mm厚アクリルで遮へいすれば十分です。
3. 35S標識アミノ酸は放射線分解で揮発性分解生成物を生じ、反応容器や計測器内面が汚染することがあるので十分に注意します。
4. 35Sで標識したアミノ酸については-20℃で保存し、凍結融解は繰り返さない。
5. 使用期間は2か月程度を目安とします。

 

51Cr γ線&X線、半減期:27.7日、最大比放射能:3.41TBq/mg、最大エネルギー:0.32MeV、0.005MeV他

1. 生物実験では細胞障害性実験に用いられることが多い。
2. 透過力が高いため、3mm厚保鉛板で遮へいを十分に行います。
3. 使用期間は1か月程度を目安とします。

 

125I γ線&X線、半減期:59.4日、最大比放射能:0.525TBq/mg、最大エネルギー:36keV他

1. 揮発性であるため、換気のよいフード等での作業を要する。また、サンプルの凍結や溶液を酸性にすることでヨウ素が揮発するため注意が必要であります。
2. 体内に吸収した場合は甲状腺へ特異的に集積します。
3. 0.02mm厚鉛板で遮へいします。
4. 使用期間は1か月程度を目安とします。